8.ソウル不滅の35年史
2010年10月1日
1968→1970→→→→→→→→→→→→→→→→→→1989→→→→→→→→→→→→→→2004

ソウルとは統一朝鮮の首都であり、民族共通のメッカである。
その証拠に、韓国のみならず、北朝鮮も1970年当時の憲法ではソウルが首都と定められていた。平壌はあくまで仮の首都という位置付けであった。
こんどのジョンウン氏には拉致被害者の開放や、韓国との統一国家実現に期待したい。
ソウルが統一朝鮮の首都に返り咲き、誰もが安心して平壌に行ける日がやって来るであろう。
そんな南北朝鮮の統一と和平への熱い願いを込めた店が、南新地にあった。その名もソウル…。

平成15年(2003年)12月、私は南新地案内所「マンゾクステーション」の中にいた。
「ビッグバン」「バカラ」「タッチVIP」「ロイヤルガーデン」「ファニーカフェ」…、各店の案内パネルが華やかである。
「ひと昔と違って随分、南新地もきらびやかになったものだな…。」、感心していた。
ここには紹介客を迎えに各店従業員がやってくる。
ふと、入口の方を向いたら、くたびれた感じの老婆が入ってきた。「ソウルです。」
老婆は若い兄さんを自分の店へ連れていった。

新年を迎えた翌月、老婆の店は落城する。
ソープ店・ソウル。昭和43年(1968年)の開店から35年の歳月が経っていた…。
場所は清流公園斜め向かいの角地にあった。同一物件において、南新地で最も長く営業した店である。ソウルなき現在も、この記録は不滅だ。
昭和48年のオイルショック、昭和53年の大渇水という難局も乗り越えてきた老舗ソープ店である。
アングラ然だった中洲・南新地に、平成9年頃から風俗メディアが席捲しはじめて、 平成13年秋には向かいに巨大風俗ビル、マンゾクシティ博多が出来て、環境は激変した。
ささやかながら、風俗誌や案内所に広告を出したのは危機感の現われであろう。
しかし平成16年(2004年)2月、建物は解体された。福岡が、そして日本全国が大事件に騒いだあの日…の生き残りであったのだが…。


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ソウルほか2店跡地には平成16年7月、「白い恋人」など数店舗がある新ビルが完成。
ビル建設に抵抗し、最後まで建設予定地に居ずわった店がソウルだ。
建設をひかえて、ほか2店は平成15年秋までに早々と閉店した。しかしソウルだけは年を越して解体寸前まで頑張り、篭城した。まるで左翼の全共闘みたいだ。
「ソウル」が新しくできた時代は、70年安保闘争の政治の季節であった。学生があばれて元気、左翼勢力があばれて元気、日本も元気であった。
就活で一般企業から嫌われた左翼学生は、風俗業界が積極的に採用した。…というより、風俗は元来、左翼勢力といった方がいいかもしれない。
その頃、左翼の日本赤軍に重信房子という美貌の女性がいた。公安警察は彼女を捕まえようと必死であった。
爆発事件の容疑者とは似つかわない可憐な容姿…、重信嬢は警察官までムラムラさせる垂涎の的であった。
やっとの思いで捕まえた時2000年すでに遅し…、重信嬢はフツーのオバサンと化したのであった…。
案内所で見かけたソウルの老婆も、開店当初は当時の重信嬢みたいな美貌のコンパニオンだったであろう。
老婆が若かりし頃、南新地トルコ街で多数のVIP客の予約がキャンセルとなる事件があった。

昭和45年(1970年)3月31日、福岡市内で医者の全国学会が催されることになっていた。 当日の朝、大勢の医者を乗せた日航機は東京・羽田から福岡に到着した。しかし彼らは降りるのを許されなかった。
赤軍派学生ら9名により日航機は乗っ取られ、彼らは人質とされた。日本初のハイジャック「よど号」事件である。
犯人グループの指示で日航機「よど号」は福岡を離陸、韓国・ソウルへ。さらに軍事境界線(38度線)を越えて北朝鮮・平壌に到着した。
ハイジャック犯は北朝鮮が受け入れ、「よど号」は日本に戻った。

福岡の学会には欠席を余儀なくされ、中洲の夜も風俗も満喫できず朝鮮半島へ連行された医者の一行。
どこの地においても、医者の全国学会なら風俗需要は格段に高まる。風俗店にとって医者は大金を惜しまない特上のVIP客なのだ。
福岡を離陸していく「よど号」の緊急テレビ中継を、唖然とした顔で見る南新地トルコ店の店員、コンパニオンの姿が目に浮かぶ。
特に「ソウル」の店主は特上の予約客がソウルへ連れ去られるという意味で、何とも味の悪い思いをしたであろう。
救いは事件で日本、韓国、北朝鮮政府の数奇な連係の下、乗客乗員に犠牲者がでなかった点であろうか。

ちなみに当時、南新地のトルコ風呂(ソープランド)は、まだ18軒だけであった…。
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